日本のモノづくりの花形なのは確かだな。主に組立の仕事で、重いものを持ち上げる体力勝負なところがあるのも特徴だな。
自動車製造工場におけるライン工の仕事には、組立作業や加工をはじめ、運搬、検査、機械オペレーターなど、実に多岐にわたります。作業自体は一人で行っても、各部門で多くのライン工が働いているためチームプレーも重視される世界といえるでしょう。
これらの製造工程のなかで、もっともイメージしやすく、肝となるのが「組立作業」ではないでしょうか。
組立作業の仕事には、人の手で対応しなければならない手動の作業もあれば、ロボットなどの機械をオペレーションする作業もあります。前者は、スパナやレンチなどの工具で自動車部品(パーツ)を結合していくのが主な仕事。手先が器用な人に向いていますが、重たいパーツを持ち上げる力作業もあるため、それなりの体力が必要です。
一方のオペレーション作業は、パーツの結合はロボットが対応するため、パーツをセットしてボタンを押すだけの比較的に楽な仕事といえます。ただし、重たいパーツを何度もセットすることもありますので、やはり体力が必要な作業といえるでしょう。
自動車製造工場は、力仕事も多いことから大変だというライン工の声もよく聞かれます。特に組立部門は、「重たいパーツを一日に何度も持ち運んだり、工場内を走り回ったりと、体をフル活用するのが大変」といったライン工の声も。また機械のオペレーションでも、「単調な仕事が多いですが、作業内容によってはケガをする危険もあるため気を緩められません」と、常に慎重な行動が求められる仕事です。
こうした点から男性の多い社会とみられがちですが、実際には女性もたくさん活躍しています。特に品質管理部門では、動作に不具合はないか、図面通りにできていない部分はないかなど、マニュアルに沿って細かい部分まで一つひとつチェックしていく仕事内容であることから、繊細な作業を得意とする女性社員が優遇されやすい傾向にあります。
仕事内容によっては、比較的に楽だと思える業務もありますが、自分にピッタリな仕事ができる会社を選ぶことが重要なポイントといえそうです。
例えば、ライン工(製造従業員)の定着率が高い(早期離職者の少ない)会社を選ぶ、手厚い研修があって初心者でも安心して働ける、溶接や電気工事士など仕事の幅を広げる資格取得に会社が支援してくれるといった、社員を大切にしてくれそうなところを選ぶのも、仕事が続けられ、安定した収入も得られるポイントといえるでしょう。
自動車工場での仕事内容は、工程ごとに大きく異なります。各工程は、大きく分けるとプレス・溶接、塗装、エンジン製造・組み立て、検査・出荷の5工程それぞれの工程での仕事内容を見ていきましょう。
自動車づくりの第一歩となるのが、プレスの工程です。鉄板を切り出し、金型でプレスして成型します。次に、成型されたパネルを溶接し、車体の外枠を組み立てていきます。
ここでの鉄板の切り出し、プレス加工、溶接に至るまでは、ほとんどが機械で行う作業です。そのため、人間の作業内容は機械操作(マシンオペレーター)がメイン。しかし、機械では難しい細かな部分の溶接は、人の手で行われます。
溶接が完了すると、目視による確認を行います。確認項目は非常に多く、集中力が必要とされる部分です。
溶接が完了した自動車のボディを機械で塗装していきます。人間の主な作業内容は機械操作ですが、ここでも細かな部分の塗装は人の手が必要になります。
塗装が完了すると、光を当てて色ムラ・傷などが無いかを目視で確認。ムラが見つかった場合はポリッシャーで磨き、均一にします。
エンジンは自動車の核心部分です。ロボットによる機械加工で精密に作られた部品を人の手で組み立てていきます。速さと正確さが同時に求められる作業です。完成したエンジンは性能テストが行われ、クリアすると自動車に取り付ける工程に進みます。
自動車のボディにさまざまなパーツを取り付けていく工程です。シートやタイヤ、ガラスの貼り付けなど大きな部品の取り付けは機械で行われますが、エンジンやバンパーなど細かい部品の取り付けは、人の手で行われます。もっとも人の手が必要になるのがこの工程です。
特にエンジンの取り付けは細かい作業工程が多いため、ペアを組み、連携して組み立て作業を行います。自動車が形になっていくのが感じられる、やりがいのある工程です。
組み立てが完了した自動車を、さまざまなテストで性能チェックします。走行検査では、ハンドリングやエンジン音、ブレーキなどをチェック。各種計器やワイパーなどのパーツごとの動作確認も行います。また、最終的な部品のゆるみがないかを、人が車体の下から目視・確認します。
検査が終了し、問題がなければ出荷を待つだけ。自動車はおもに船で出荷されるため、工場に埠頭が隣接しているケースがほとんどです。工場から船に積み込むまでの運転を行う作業員もいます。
自動車製造の求人は、求人情報サイトでも数多く見られます。ここではわかりやすく、業務ごとに分けた代表的な求人情報をご紹介します。※情報は2019年8月時点の内容です。
自動車に使用する部品の加工・組み立て・塗装など。部品加工は部品の鋳造、機械を使っての工作、熱処理、プレスを担当します。組み立てはエンジン・車体・車両が対象です。
※配属部署により、これらの作業内容は異なります。
※生活準備金含む・入社日の次月賃金計算〆日に在籍および出勤率100%の場合支給
組み立て・供給・検査などの仕事です。検査では車体や部品の傷やゆがみ、凹凸を目視や手で触って調べます。供給工程では部品をそれぞれのケースに分け、カートに乗せて各ラインに補充します。
プレス課・・・プレス機のアルミを設置しボタンを押し、車体のフレームやドアの製造を行います。完成した製品は2人がかりで棚へ運搬します。
ボディ課・・・フレームやドアを車体へ溶接します。溶接自体はロボットが行います。溶接後は穴あけ加工を行い、インパクトレンチでボルト止めを行います。
塗装課・・・エンジンや車体に水が入らないよう、シーリング加工やエアブローを使ってほこりを取り除く作業を行います。
組み立て課・・・塗装、溶接後の車体にドア・ガラス・シート・配線を工具で組み付けします
自動車部品(サイドミラー)の組み立て作業を行います。
ネジ止めを主とした作業で、自動車のサイドミラーを作っていく仕事です。
自動車に使われる樹脂燃料タンクの組み立て・組み付け・その他製造作業を行います。
成型工程・・・成型機から出てきたタンクの押し出し・バリ取り。
組み立て・検査・供給・・・形成されたタンクのエアー漏れ検査、ガソリンを吸い上げる燃料ポンプの取り付け、部品をピッキングし各ラインへ供給。
検査・・・モーターが作動するか検査
出荷・・・各工場へ送り出すための看板設置
工場勤務と一口に言っても、さまざまな業種が存在します。その中でも、自動車工場の仕事は収入がよいようです。自動車工場で働く人は、正社員と期間工と呼ばれる契約社員の二通りに分けられます。それぞれの待遇や年収について見てみましょう。
年収は、およそ400万円~500万円。福利厚生が手厚く、各種諸手当もつくので、大手の自動車メーカーの正社員であれば700万円を超えることもあるようです。
自動車工場に正社員として就職する人は、専門の学校で知識を身につけている場合が多く、設計や管理職の道も考えられます。
期間工は、一定期間のみ契約して働く契約社員のことです。非常に多くの求人があり、待遇も好条件の場合が多いです。期間工の年収は、400万円~450万円ほどと言われており、一般的な正社員とあまり変わらないと言えます。
しかし、正社員の場合は年功序列で年々収入が上がっていくことが多く、何といっても福利厚生がしっかりしているのが大きいでしょう。長く働くのであれば、正社員を目指した方がよいと言えます。また、中には、期間工から正社員への登用の道が用意されている会社もあるようです。
大手自動車メーカー3社を比較してみました。
国内最大手の自動車メーカー、トヨタ。国内シェアは4割を超え、国内だけでなく世界でも第三位の自動車販売台数の実績を誇る大企業です。
「世界のトヨタ」といわれるほど技術力が高く、合理的・効率的な車づくりを追求したトヨタ生産方式は、世界中で研究されているほど。生産台数が非常に多いため、ライン作業では速さと正確さがもっとも求められるでしょう。
最大手だけあり、収入のよさは自動車工場勤務の中でもトップクラス。手厚い福利厚生も魅力的です。作業のスピードに慣れることができれば、高収入が期待できる職場といえるでしょう。
ホンダの強みは、四輪自動車だけにとどまらないオリジナリティーに富んだ製品開発にあるようです。
バイクメーカーから始まり、飛行機や船などさまざまな分野にも進出してきたホンダ。F1といったスポーツカーのエンジン開発など、自動車づくりに非常にこだわるエンジニアが集まっていると言われています。車やバイクが好きな人がもっとも就職したいと思う会社かもしれません。
社風は「体育会系」「ロマン主義」などと評されることもあり、ほかの2社と比較しても、独自の路線をいく会社のようです。また、口コミを見ると、収入や待遇、福利厚生についても高い評価を得ています。
電気自動車や自動運転など、常に最先端の技術を開発し続けている日産。特に自動運転の分野では国内随一の技術を持ち、他社の追随を許しません。
日産が世界で初めて開発に成功した同一車線自動運転技術を搭載した車も、実際に販売されています。将来の自動運転市場での躍進が期待されている会社です。
また、生産台数の9割以上を海外で販売しており、ルノーとも提携しているグローバル企業でもあります。そのため、社内の雰囲気も、ほかの2社と比較して外資系に近いようです。
昇進や昇給は、年功序列ではなく成果主義で査定されるのが特徴です。自分から積極的に動いていきたいチャレンジ精神のある人に向いているかもしれません。
自動車製造工場には、大手自動車メーカーだけでなく、部品メーカーの工場など関連企業が多いことも特徴です。
例えば、国内最大の自動車メーカーであるトヨタの場合、下請企業は全国に3万社以上もあります。トヨタに次いで多いのが日産で、こちらも全国に約1万4000社の下請企業が存在します。
つまり、就職先として人気のある大手自動車メーカーに入らなくても、自動車製造にかかわれる工場は全国にたくさんあり、間口はとても広いのです。
下請企業でもライン作業はありますが、大きな部品を組み立てるというより、細かい部品を作ることも多く、手先が器用な人に向いているといえるでしょう。
こうした下請工場の多くが、自動車メーカーの近くに集積していることも、自動車製造工場の特徴といえます。
トヨタであれば愛知県、日産なら神奈川県や東京都、マツダは広島県、スバルなら群馬県といったように、ある特定の地域に自動車の「城下町」が形成されています。
自動車製造工場が自分の住んでいる地域にない、という場合でも安心してください。これらの会社では、寮や社宅を完備しているところも多いのです。就業場所が自宅から遠いという方でも、安心して就業できます。
給料がいちばんいいのは自動車メーカーの本社に勤めることですが、下請企業でも大手を狙うことで満足の給料が得られる可能性が高くなります。
下請企業で有名なところといえば、デンソーやアイシン精機などがあるでしょう。
デンソーは、世界36カ国に15万人以上の社員を抱える自動車部品メーカーです。開発力に強みを持ち、これまでに世界初の製品を100以上創出、特許件数は全世界で38,000件も取得しています。
また、アイシン精機は多様な部品を取り扱っていることが強み。1万点以上の自動車部品を世界各国の自動車メーカーに納品しています。こうした部品の研究開発や設計、生産技術開発なども自社で対応できる大手メーカーで、学生の就職先としても人気のある企業です。
いずれの会社も愛知県が本社ですが、取引先はトヨタだけでなく日産やホンダ、マツダなどの国内大手自動車メーカーを中心に幅広いことも特徴。アイシン精機については、ボルボ、ルノー、フォードなど海外メーカーとの取引もあるので、多様な仕事に取り組めるチャンスも広がりそうです。